研究概要 |
培養ヒト表皮細胞を皮膚移植の材料として用いるには,出来るだけ短期間に表皮細胞の増殖をはかり,分化を誘導して移植の操作に耐える強靭さを持った細胞シ-トを形成することが必要である.患者皮膚より採取した表皮細胞をEGF,ハイドロコ-チゾン,牛脳抽出物を添加したMCDB153でCa^<++>0.1mMにおいて培養する。直径60mmの培養シャ-レに表波細胞10^5個を接種した場合,7日ごとに6個のシャ-レに分けて継代培養できる。3代目以降で培養液をGIT培地に変更し,Ca^<++>mMで培養すると数日で重局した細胞よリ成るシ-トが形成される。最初に採取した皮膚の面積は2〜3cm^2であるから25日以内に300〜500倍の面積の表皮細胞シ-トを作成することが可能である。表皮細胞シ-トはディスパ-ゼ処理によりシャ-レから剥離して創面に貼布する。また皮膚線維芽細胞を含んだコラ-ゲンゲルを培養シャ-レの底面に作成し,その上に表皮細胞を培養して一種の人工皮膚を作成した。表皮細胞は線維芽細胞を含んだコラ-ゲンゲル上でよく増殖し,シ-トを形成した。ラミニン,IV型コラ-ゲン,類天疱瘡などの成分を伴った基底膜が形成され,高度の構造を示すにいたった。創面へ移植した際の固定法として,フィブリン製剤で接着をはかったが,かならずしも良好な結果は得ていない。凍結保存に関しては,分散して細胞浮遊液にした場合は80%の生存率をもって保存出来たが,シ-トのまゝ保存した場合には,培養にもどした際,全体に壊死が見られ,一部の細胞の生存を認めたのみであった。表皮細胞シ-トを創面に移植した場合,たとえ生着することがなくても内芽の政善は著明であるが,その肉芽形成促進因子についてはまだ実験的解明の成集をあげることが出来なかった。
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