研究の目的は大血管の血管壁の血流を、生理的な状態で血管内から測定し、病変のある動脈壁の血流の評価を生理的に行うことにある。微小血流の評価にはすでに所有しているレ-ザ-ドップラ-装置(PeriFluxPF3)を使うこととしていた。 大動脈の内腔からレ-ザ-ドップラ-のプロ-ブを接触させて内膜の血流を測定するため、はじめ組織用のプロ-ベを用意した。しかし、このプロ-ベは先端に細いフアイバ-を接続する必要があった。これではシ-スイントロデュ-サ-の止血弁で容易に破損するうえ、血管内で離脱する可能性があったために、危険で臨床応用にいたらなかった。 検討の結果、内視鏡用プロ-ベ(PF309)を利用することにした。このプロ-ベは5.5Fのシ-スイントロデュ-サ-を通過しうることが確認できた。またワンピ-スのため血管内において脱落する心配もない。またプロ-ベの本体はX線透過性なので透視では確認できないが、先端に金属部品があるため、透視下での位置確認も容易であり、有用とわかった。 臨床応用として、まず動脈疾患以外の診断目的で血管撮影を施行する症例について使用した。大腿動脈から25cmのロングシ-スを挿入し、ここからプロ-ベを挿入し、透視下にプロ-ベを進めていく。動脈壁に達した点で測定を行うが、プロ-ベの先端が軽く大動脈壁に接する様にする。測定の結果、いずれの症例においても、壁に接した時のflowと大動脈内にfreeに置いたときのflow valueに差がなく、壁の血流を反映しているものとはいいがたかった。これは大動脈血流が壁血流にくらべて大きく影響すること、大動脈の拍動がプロ-ベの固定を困難にすること、プロ-ベの先端を大動脈壁に垂直に接することが困難なことが原因と考えられた。次の課題として、現在プロ-ベの安全で確実な固定法を試みているところである。
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