研究概要 |
肺と同様の密度の容量約5000mlの肺ファントムを試作し、その中に直径0.5cm,1.0cm,1.5cm,2.0cm,2.5cmの球線源にTlー201を封入して挿入し、肺ファントム(バックグランド)との放射能度比が3対1になるように設定し、高分解能SPECTで球線源の検出と放射能の濃度比の定量測定を検討した。直径1.5cm以上の球線源は描出されたがそれ以下の小さなものは、この放射能濃度比では検出困難であった。以下に述べる臨床例で直径11mmの小肺癌病巣の描出に成功しているので実際の肺癌病巣へのTlー201の集積濃度は予想以上に高く正常肺組織の5ー10倍に達していることが判明した。ファントム実験による測定濃度比は直径1.5cmで1.37,2.0cmで1.54,2.5cmで1.70と明らかに実際値より低値でpartial volume effectを認めたので小病巣の組織診断に際しては病巣・肺組織の実測測定値を補助する必要が明らかとなった。喀痰細胞診または胸部x線写真で肺癌が疑われた症例にTlー201を投与して高分解能SPECT法を試み、肺癌の検出成績について検討した。現在までの成績は病理の確定した肺悪性腫瘍27例(原発性肺癌23、他の肺原発性腫瘍2、転移性肺癌2)、肺良性病巣6例において、静注3時間後の画像で肺悪性腫瘍27例中(96%)が陽性であり、肺野型の11×7×7mmの中分化型腺癌病巣が明瞭に描画された。胸部x線写真、FCR断層で描出できなかった気管支幹に15mmの広がりのある腫瘍容量の乏しい肺門型早期癌(中分化型扁平上皮癌)は淡い集積を認めるものも異常集積と診断できなかった。また、良性病巣6例中3例が陽性であった。以上の結果から本法により肺悪性腫瘍を高率に描画でき、長径10mm程度の肺野型肺癌の検出の可能性が示唆された。さらに症例を重ね病巣集積率や集積率の時間的変化の定量測定で良性悪性の鑑別、肺癌の組織診断を行う予定である。
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