研究概要 |
放射線の分割照射における癌細胞自体の変化と治療効果との関連を明らかにするために,種々の頭頚部悪性腫瘍の放射線治療前・治療中に経時的に生検を施行し,増殖期細胞(proliferating cells)の核抗原と反応する抗体であるKiー67抗体を用いて免疫組織化学的染色を行なった。 対象は,高知医科大学附属病院放射線部において放射線治療を行なった頭頚部悪性腫瘍(扁平上皮癌)割者27例であるが,その内6例は染色不良もしくは非特異的染色を来したため検討から除外し,21例となった。その内訳は,舌癌8例,口腔底癌5例,上顎癌3例,頬粘膜癌2例,その他,歯肉癌,喉頭癌,中耳癌が各1例である。放射線治療は,LinacloMV XーrayもしくはCobalt 60 γーrayにて一回2Gy週5回法で行い,放射線治療前および10Gy照射時,20G/照射時に生検を施行し液体窒素中に保存した。免疫組織化学的染色は,われわれの従来の報告のごとくABC法にて行い,Kiー67抗体は,medac Diagnostika製のmonoclonal antibody(mouse IgG1)agalnst proliferating cellsを用いた。また,Kiー67陽性癌細胞比率の評価は,光学顕微鏡にて160倍の視野を5視野撮影し,カラ-写真上で陽性細胞を計測して行なった。 放射線治療前のKiー67陽性癌細胞比率は20%〜70%であり平均34.3%,10Gy照射時では5%〜50%で平均25.8%,20Gy照射時では1〜45%で平均14.7%であった。放射線治療前のKiー67陽性細胞比率が50%以上であった2例のうち1例では治療開始1年3ヵ月後に局所再発を来した。放射線治療20Gy照射時にKiー67陽性癌細胞比率が2%以下であった6例のうち3例は局所再発を来し,他の1例は肺転移のため死亡した。したがって,比較的小線量照射時におけるKiー67陽性癌細胞比率の著明な低下は局所再発や患者の予後不良と密接な関連を有していることが示された。
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