研究概要 |
主に頭頸部腫瘍について、浸潤リンパ球のサブセットやその量と放射線治療効果や患者の予後との関連性を調べた。その結果、約10Gyの放射線照射時に癌組織にLeu-3a+3b陽性でLeu-8陰性かつLeu-HLA-DR陽性の細胞の著明の浸潤を認めた2症例では、著しい放射線治療効果を示した。これらの2症例は、約20年前に大星、下里、梅垣らによって報告された、放射線治療の初期に癌組織に著明なリンパ球浸潤を来たし放射線に著効を示した症例と一致するものと思われる。これらの浸潤細胞は、活性化ヘルパー・インデューサーTリンパ球または遅延型過敏症細胞であり、直接、癌細胞に対して殺細胞的に働くものと思われる。実際、抗DNAポリメラーゼαやKi-67抗体を用いた最近の我々の検討によって、20Gy照射時に癌細胞はこれらの抗体に陰性を示したのに対し、浸潤リンパ球のほとんどは陽性を示すという所見が得られた。このことは放射線治療中の腫瘍組織にみられる浸潤リンパ球は、放射線照射にもかかわらず分裂増殖能を保持したいableな細胞であることを示しており、癌細胞をターゲットとして能動的に癌組織浸潤を来したか、あるいは腫瘍局所において増殖したものと推定される。 さらに、放射線の分割照射における癌細胞自体の変化と治療効果との関連を明らかにするために、種々の頭頚部悪性腫瘍の放射線治療前・治療中に経時的に生検を施行し、増殖期細胞の核抗原と反応する抗体であるKi-67抗体を用いて免疫組織化学的染色を行なった。放射線治療前のKi-67陽性癌細胞比率は平均34.3%,10Gy照射時では平均25.8%,20Gy照射時では平均14.7%であった。また、21例の検討から、比較的小線量照射時におけるKi-67陽性癌細胞比率の著明な低下は局所再発や患者の予後不良と密接な関連を有していることが示された。
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