主に頭頚部腫瘍を対象として、癌組織における細胞外マトリックスとしてのフィブロネクチン、ラミニンの発現を、放射線治療前・治療中について免疫組織化学的手法ならびにモノクローナル抗体を用いて検討した。その結果、放射線治療前・治療中を通じて癌蜂巣の周囲を厚くとり囲んでフィブロネクチンが存在する症例ではその予後は良好であることが明らかとなり、また、基底膜におけるラニミンの断裂が明らかに認められる症例では予後不良のことが多いことが示された。従って、フィブロネクチンやラミニンのような細胞外マトリックスもまた癌の治療効果・予後に深く関与していることが明らかとなった。放射線治療の効果は個々の癌に対して決して一様ではなく、発生臓器・組織・分化度が同一であっても、その効果には大きな違いが認められることが多い。われわれは、この放射線治療における個人差ともいえる問題に対して、主に放射線治療における癌組織での種々のリンパ球サブセットの種類・量の変化ならびにKi-67陽性癌細胞(生残癌細胞)の変動の面からの解析を続け、一定の成果を挙げてきており、今回はフィブロネクチン等の細胞外マトリックスについて検討したが、なお解明すべき問題は多く残されている現状にある。従って、これらの研究に引き続いて、現在、種々の癌遺伝子産物の発現と放射線感受性の関連について解明するために、頭頚部腫瘍を主体とした種々の癌に対する放射線治療前・治療中の癌組織について、種々の癌遺伝子産物に対するモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的検討を行っている。
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