研究課題/領域番号 |
03670550
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
水口 和夫 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (50145794)
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研究分担者 |
高島 澄夫 大阪市立大学, 医学部, 助手 (40187951)
中村 健治 大阪市立大学, 医学部, 講師 (00145781)
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キーワード | 肝細胞癌 / 門脈造影 / 門脈塞栓術 / 無水アルコール / 経皮経肝門脈造影 |
研究概要 |
初年度に選択的肝区域硬化術の手技と安全性に関する予備的検討を加え、次年度に腹水肝癌モデルによる実験的検討を実施して本法の安全性と治療効果を知り、最終年度には臨床例8例に実施しその臨床的意義を検討した。代表的症例を呈示する。72歳男子。5年前より肝機能異常、下腿浮腫、腹水にて近医で経過観察していたが、肝腫瘤を指摘され精密検査のために入院した。腫瘍マーカーの上昇は無かった。超音波検査、CT並びに血管造影にて肝右葉後上区域に直径4cmの腫瘍を認め肝細胞癌と診断したが、患者や高齢でかつ肝機能が不良なことより外科手術は不能と判断した。そこで選択的肝区域硬化術を試みた。経皮経肝門脈造影後、PTP-CTにて担癌門脈枝が後上区域枝であることを確認し、無水エタノール20mlをバルーン血流遮断下に急速注入した。注入直後のみに上腹部疼痛および灼熱感を訴えたが、酒酔い症状は全く認められなかった。術直後の門脈造影では注入門脈枝は完全に閉塞していた。注入1週後のCTではPTP-CTの造影区域に一致した楔状の低濃度領域を認めた。注入18週後の固有肝動脈造影では腫瘍濃染は完全に消失していた。楔状の低濃度域は経過とともに萎縮し、10ヶ月後にはわずかに線状の低濃度領域を残すのみとなっていた。術後の肝機能の変動はGOT,GPT値は本法施行1日後に上昇したが、1週間以内に術前に回復した。末梢血中エタノール濃度は5分後0.3mg、10分後0.3mg、20分後0.3mgと上昇したがいずれも中毒値の5mg/mlをはるかに下回った。以上の実験及び臨床例の検討より本法は肝細胞癌に対して安全かつ有効な治療法になり得ると考えられた。
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