覚せい剤精神病の発症機転と再発準備性の形成機転について、平成4年度はドーパミン-グルタミン酸相互作用の役割に焦点をしぼり以下の知見が得られた。 (1)Methamphetamine(MAP)5mg/kgを2時間毎に4回連続投与し、脳内透析法によって、側坐核と線条体でグルタミン酸の動態を検討した結果線条体においてのみ細胞外グルタミン酸は約2倍に放出が亢進した。 (2)上記のMAP連続投与の後、1週間後に脳内各部位のドーパミン、HVA DOPAC含量を測定した結果、線条体のみで生食投与群に比較して有意に減少していた。 (3)MAP連続投与にNMDA受容体拮抗薬であるMK-801を同時投与すると線条体のDA枯渇およびDA取り込み部位の減少効果が阻止された。 (4)MAP反復投与による常同行動、移所運動量を指標とした行動感作の成立はMK-801を同時投与によって阻止された。 以上の知見から覚醒剤精神病の発症機転と再発準備性の形成のメカニズムを次のとおり考察した。MAP反復投与により線条体を中心にグルタミン酸放出が促進し、NMDA受容体の異常刺激によってDAニューロンの変性を惹起する。その結果としての不可逆的な神経終末DA取り込み部位の減少やDA自己受容体感受性の低下が、MAP投与時の細胞外DA放出の増大に関与し、行動感作として永統化するであろう。MK-801はMAP投与によるNMDA受容体の過剰刺激に拮抗することにより、上記病的機転を阻止し、行動感作の成立を阻止したいといえるだろう。
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