研究概要 |
我々はすでにマウスを用いて,ストレスの種類や期間によって免疫系の反応が異なること,うつ病モデルの一つといわれる嗅球摘除マウスで免疫機能が低下していて,ストレスに対する免疫系の反応性も変化することを見い出している。本年度は,1.ストレスに対する免疫系の変化について,自律神経系や内分泌系がどのように関与しているか,2.嗅球摘除マウスなどのうつ病モデル動物において,抗うつ薬の免疫機能に対する効果,3.ストレスを負荷したマウス,うつ病モデル動物,および同意を得たうつ病患者についてリンパ球サブセットの変化,以上について検討することを計画した。1.と2.については,プラック形成細胞数を指標として検討した。1.については,急性拘束ストレスに対して交感神経系が即時的な免疫促進作用をもつこと,反復拘束ストレスに対しては副賢皮質系が免疫抑制作用を示すが、副賢を摘除しても反復ストレスに対して免疫機能が低下するので,他の要因も関与していることが示唆された。また,甲状腺刺激ホルモンは免疫機能を刺激し,甲状腺ホルモンは免疫抑制的に作用することが示唆された。甲状腺機能が亢進しているとストレスに対する免疫機能の変動が抑制され,甲状腺機能が低下しているストレスに対する免疫機能の変動が大きいことも示唆された。2.については,正常マウスでは抗うつ薬は免疫機能を低下させるが,嗅球摘除マウスでは抗うつ薬の反復投与によって,低下していた免疫機能が回復することが示された。3.については,現在うつ病患者を対象に検討中である。今までのところ,うつ病患者ではヘルパ-T細胞,ナチュラルキラ-細胞が減少していることが示唆されている。当初計画していなかったが,より詳しく免疫機能を評価するために,ナチュラルキラ-細胞機能,マイトジェンに対するリンパ球幼若化反応についても検討中である。
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