研究概要 |
ストレスの種類や期間に応じて免疫機能は変化し,昂進することも低下することもあることがわかった。マウスに拘束ストレスを負荷した場合では、16時間/日の拘束を3日間繰り返すと免疫機能が低下した。マウスの両側の嗅球を摘除すると免疫機能が低下した。嗅球摘除マウスでは,16時間の拘束1回でも免疫機能が低下した。次に,抗うつ薬の免疫機能に対する影響を調べた。イミプラミン5mg/kgを1日の投与量とした。3日間の投与によって,正常マウスでは免疫機能が低下したが,嗅球摘除マウスでは変化がみられなかった。10日間の投与によって,正常マウスでは免疫機能が低下したのに対して,嗅球摘除マウスでは嗅球摘除によって低下していた免疫機能が回復した。ストレスと免疫機能との関わりには内分泌系も関与していると考えられる。そこで臨床的に変化がみられやすい視床下部下垂体ー甲状腺系と免疫機能との関係について,マウスを用いて検討した。in vitroでは甲状腺刺激ホルモン,甲状腺刺激ホルモン分泌促進因子のいずれも用量依存性に免疫機能を昂進させ,甲状腺ホルモンは低下させた。in vivoでは,甲状腺摘除によって免疫機能に変化はみられなかったが,拘束ストレスによる免疫機能の変化の程度が大きくなった。甲状腺ホルモンを投与すると免疫機能は低下したが,拘束ストレスによる免疫機能の変化の程度が減衰した。うつ病について,患者の同意を得て,免疫機能の変化を経過を追って調べている。CD4/8やNK活性などで異常値がよくみられる。病型や年齢・性などとの関係を現在検討中である。なお,適切な治療を行うと免疫学的な異常値が正常化すること,適当な感覚刺激,特に香りが精神医学的にも免疫学的にも有用な治療手段である可能性が示唆されている。
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