昨年度までの研究では、ストレスによって免疫機能が変化するが、ストレスの種類や負荷期間によってその様相は異なることが明らかになった。マウスに拘束ストレスを負荷した場合には、免疫機能が当初は昂進し、その後低下に転じた。神経系、免疫系、内分泌系が複雑に相互調節をしていると考えられ、その一翼として甲状腺ホルモンや嗅球が免疫機能およびストレスに対する反応に関与していることを示した。嗅球摘除によって免疫機能は低下し、甲状腺ホルモンは免疫抑制的であるものの免疫機能の維持、安定にも重要であることが示唆された。また、抗うつ薬の免疫機能に対する影響が、正常マウスと嗅球摘除マウスでは異なることも示唆された。イミプラミン5mg/Kgを1日の投与量とし、3日間投与すると、正常マウスでは免疫機能が低下したが、嗅球摘除マウスでは変化がみられなかった。イミプラミンを10日間投与すると、正常マウスでは免疫機能が低下したのに対して、嗅球摘除マウスでは嗅球摘除によって低下していた免疫機能が回復した。昨年度から臨床研究も行なっている。主にうつ病について、患者に十分に説明した上で同意を得て、免疫機能の変化を、神経内分泌機能や治療薬との関係をみながら経過を追って調べている。CD4/8やNK活性などで異常値がみられるが一定の方向ではなく、神経内分泌機能や病型、年齢との明確な関係はみられていない。しかし、適切な治療によってうつが改善されると異常値が正常化することが示唆されていて、今後精神と免疫の関わりについて検討を続け、さらに詳細を明らかにしていく予定である。
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