平成3年度は、ストレスによる免疫機能の変化について検討した。ストレスの種類や負荷期間によってその様相は異なることが明らかになり、マウスに16時間/日の拘束ストレスを負荷した場合には、1日で免疫機能が昴進し、3日で低下した。うつ病モデルの一つとさらている嗅球摘除マウスでは免疫機能が低下していて、1日の拘束でもさらに免疫機能が低下した。平成4年度には、抗うつ薬の免疫機能に対する影響を検討した。イミプラミン5mg/kgを1日の投与量とし、3日間投与すると、正常マウスでは免疫機能は低下したが、嗅球摘除マウスでは変化がみられなかった。イミプラミンを10日間投与すると、正常マウスでは免疫機能が低下したのに対して、嗅球摘除マウスでは嗅球摘除によって低下していた免疫機能が回復した。従来抗うつ薬は免疫抑制的にはたらくと報告されているが、神経機能によって免疫機能に対する効果が異ることが示唆された。さらに、神経系、内分泌系、免疫系の相互作用の一翼として、うつ病の臨床上重要であることが多い甲状腺機能と免疫機能の関係を検討した。甲状腺ホルモンそのものは免疫抑制的な作用をもっているが、生体内では免疫機能の維持、安定に重要であることが示唆された。平成4年度末から臨床研究も行なっている。主にうつ病について、患者に十分に説明した上で同意を得て、免疫機能の変化を、神経内分泌機能や治療薬との関係をみながら経過を追って調べている。CD4/8やNK活性などで異常値がみられるが一定の方向ではなく、神経内分泌機能や病型、年齢との明確な関係はみられていない。しかし、適切な治療によってうつが改善されると異常値が正常化することが示唆されていて、今後精神と免疫の関わりについて検討を続け、さらに詳細を明らかにしていく予定である。
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