研究概要 |
Methamphetamine(MAP)反復投与による逆耐性現象でみられる過剰なDA放出のメカニズムについて、脳内透析法を用いて研究した。1)MAPの14日間反復投与から7日間後、Na^+,K^+-ATPaseの阻害薬であるウアバインを線条体に潅流したところ、生食対照群に比較して、線条体内潅流液中のDAの増加はより一層大きかった。このDAは新合成DAであった。MAP反復投与によって線条体での特異的[^3H]ウアばイン結合及びNa^+,K^+-ATPase活性に変化はなかった。さらにMAP反復投与群ではMAP再投与によってNa^+,K^+-ATPase活性の上昇を認めた。以上より、MAP反復投与後では細胞膜内外のNa^+勾配が減少し、そのために線条体からのDA放出が増大しやすい状態になっている可能性が示唆された。2)MAP反復投与による逆耐性現象の形成に及ぼす生後発達の影響を、最終投与から3週間後に行ったMAPチャレンジによる行動観察に加え、線条体潅流液中のDA濃度を指標として検討した。生後7および14日目からMAPを投与した群においては、生食群とMAPの間で行動及びDA増加に有意差を認めなかった。しかし、生後21日目、28日目および成熟獣として56日目からMAPを投与した群においてはMAP群の行動の増加は生食群のそれよりも有意に大きく、線条体潅流液中のDA濃度の増加も生食群のそれよりも有意に大きかった。以上より、行動のみでなく、逆耐性現象を形成する脳内の可塑性変化も生後3週目以降のMAP暴露により、形成されることが明らかとなった。
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