研究概要 |
アルツハイマ-病は神経原性の変化を伴う重篤な痴呆で,現在のところその原因や病状の進行等ほとんど判明していない。近年我国でも罹病者が増える傾向にあり,難治性の疾患の中でも最も解明がいそがれている病気の一つである。 本疾患のアプロ-チの方法として,コリン作働性ニュ-ロンの脱落が報告され,実験動物のレベルで痴呆モデル動物に対する胎仔の神経細胞の移植が報告されている。 そこで本研究では以下の実験を行い,アルツハイマ-病の治療方法としての脳・神経細胞移植の可能性を探った。 1.ラット片側海馬采,脳弓をアスピレ-ションで除き,海馬に投射するコリン作働性ニュ-ロンを除去することで,学習記憶障害をもったモデル動物を作成した。学習障害は水迷路実験によった。 2.胎生14〜16日令の胎仔脳の前脳基底部を無菌的に取り出し,トリプシン処理により細胞浮遊液としてマイクロシリンジで障害側の海馬に移植した。 3.移植動物において学習記憶障害の著しい回復が認められ,また,アセチルコリンエステラ-ゼ線維の海馬での回復も認められた。 本モデル動物における脳神経細胞の移植は治療法の一環として有効であることを示した。
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