研究概要 |
代用血管移植後、中期から遠隔期におこる閉塞の主因と考えられる吻合部内膜肥厚の発生機序とその予防法を検討するため、小口径代用血管の雑種成犬頚動脈への置換実験を行ない、(1)代用血管の材質や構造の違いによる開存率、吻合部内膜肥厚発生の頻度の検討、(2)吻合法による肥厚発生や吻合部創治癒の検討、(3)薬剤(抗血小板製剤)による開存率や肥厚抑制効果の検討を行なった。 1.実験的に吻合部内膜肥厚を作成して、その特徴を検討するため、3mm口径poly urethane人工血管、繊維長が30μm,50μm,90μmの3種類のePTFE人工血管および下肢自家静脈を頚動脈と置換したが、全体の移植後3か月の時点における開存率は50%であり、吻合部内膜肥厚は27%に発生した。肥厚の程度は自家静脈で少なく(肥厚係数1.20)、polyurethaneで高値(同1.44)であった。 2.吻合方法の違いによる吻合部内膜肥厚の程度を比較するため、NdYAGレーザーを用いた血管吻合と縫合糸による吻合を自家静脈移植で行ない肥厚係数を両者で比較した。レーザー群、縫合糸群とも閉塞例はなかったが、レーザー吻合では内膜形成状況や組織治癒が良好で吻合部内膜肥厚の予防トレーザー吻合が有利に働くことが示唆された。 3.薬剤による吻合部内膜肥厚の抑制効果を検討するため、抗血小板剤(KC765)を代用血管移植後投与し、非投与群と肥厚の程度を比較した。開存率は投与群が有意差はないも非投与群より高値の傾向を示したが、肥厚係数は非投与群と全く差がなく、抗血小板剤による吻合部内膜肥厚の抑制効果は認められなかった。 吻合部内膜肥厚の発生機序は今だ明らかとはならず、薬剤による予防も確立するには至らず、更なる検討が必要と考えられた。
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