研究概要 |
これまでに49例の神経芽腫症例と,他の小児悪性固形腫瘍11例を含む39例の対照群において血漿NPY濃度を測定し以下の結果及び成果を得た。 1)血漿NPY濃度は新生児期に約500pg/mlの値を示し,その値は年令と共に徐々に低下し,10〜15才で正常成人値(150pg/ml)に達する。2)神経芽腫症例の約85%において陽性を示し,褐色細胞腫、本態性高血圧症などに比較しても有意に高値を示す。3)これまでの結果では,他の小児悪性腫瘍で陽性例はなく,NPYはneuralcrest由来の腫瘍に特異的な腫瘍マ-カ-であると考えられてる。4)蔭性例は予後良好例であり全例が腫瘍なしで生存している。5)病期進行例は高い血漿NPY濃度を示し本症患の予後判定に有用である。6)有効な治療による腫瘍の縮少とともに血漿NPY濃度が低下し,再発により再上昇する事から,血漿NPY濃度は腫瘍の活性を示し治療の有効性の判定とfollowーupに有効である。7)他の腫瘍マ-カ-と比較すると,血漿NPY濃度はNSE,LDH,フェリチンと相関がみられた。一方,カテコ-ルアミン代謝産物であるVMA,HVAとは相関せずVMA,HVA非産生神経芽腫が予後不良である事と一致した。8)組織分類(嶋田分類)との比較ではUnfavorable Histology群11例の血漿NPY濃度はFavorable Histology群21例に比し有意に高値を示した。9)従来ブタのNPYの抗体を用いた抽出法により血漿NPY濃度を測定したいたが,ヒトNPYの抗体作製に成功し直接法による測定を開始した。これにより,これまでに比較した少量の検体(血漿0.1ml)で,短期間(72時間)で結果がえられるようになった。今後,高感度ヒトNPYによるRIA法の確立ができたので尿中NPY濃度の測定が可能となるものと考えており,予後不良の神経芽腫に対する早期発見を目的としたマススクリ-ニングに尿中NPYの測定を用いる方法が可能となる。
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