1、ウォーター・ジェット血管形成術システムの作成:ポンプは高圧マイクロフィーダー(古江サイエンス:JP-H5)を、カテーテルは外径5Frで先端孔0.1mmの試作用カテーテルを用いた。先端吐出圧は10Kg・f/cm^2以上が得られた。 2、動脈壁に対する噴射の影響:ヒト大動脈壁を用い正常動脈壁に対する影響を検討した。空中では1〜2秒間の噴射により血管内膜に欠損部が生じ3〜5秒間の連続噴射で動脈壁全層に変化が及び10秒噴射では血管壁の断裂像が観察された。一方、水中噴射では血管内壁の変化は肉眼的にはほとんど観察されず、5秒間の噴射でも内膜層の水泡性変化にとどまり、ウォータージェット噴射の高い安全性を示す結果が得られた。 3、硬化性・閉塞性病変に対する噴射効果:アテローム変性への空中での噴射では変性層は削られるように除去され、内膜下に破壊が進むと血管壁の解離が生じた。しかし水中噴射では水泡性変化が観察されるのみであった。また完全閉塞例に対しては、空中噴射では閉塞部の破壊効果は30秒間の噴射でも直径約2mm程の小孔を生じたのみであったが、水中噴射では20秒で対側まで貫通でき40秒噴射ではほぼ完全な開通が得られ、水中噴射の有用性が確かめられた。組織学的にも血栓除去部の辺縁は平滑であった。ただ硬化変性した血管壁自体には無効であった。 4、まとめ:破砕された組織小片の処理や病変に応じた至適吐出圧の設定や噴射させる液体の選択などが課題として残されたが、ウォータージェットは、正常血管壁への影響を軽度に保つ一方で血栓などによる閉塞性病変には強い破壊効果を示すことが判明し、この方法は閉塞性血管疾患に対する新しい非手術的な血管内治療法になり得る基本的能力を有していることが示され、またその特性上血管形成術のみならず血管内の清掃という新しい治療概念の導入にも寄与できるものと思われた。
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