研究概要 |
1.筋組織培養を用いた筋蛋白崩壊のbioassay系を確立した。幼若ラットのヒラメ筋をincubationし、培養液中に放出されたアミノ酸量を測定、筋蛋白崩壊の指標とした。種々の物質をこの培養液に添加し筋蛋白代謝に与える影響を観察した。培養を行う際、筋両端をpimmingし筋に緊張を与え、培養液にインスリンを添加する事により筋のviabilityは向上し、安定した筋培養系が確立された。培養液中のアミノ酸のうち、分枝鎖アミノ酸(BCAA)については、HPLCを用いたautoーamalyzerによる測定系を確立した。しかし、筋組織において分解合成されないチロシンの測定が望ましく、現在、測定系の確立を急いでいる。2.上記のbioassay系を用いた研究から以下の見地が得られた。i)ヒト洗浄血小板浮遊液にトロンビンを加え刺激し遠沈後得られた上清(stim.sup)には、筋蛋白崩壊誘導因子が含まれていることが示唆された。(stin,sup・添加時、BCAA放出量は、刺激を加えなかった血小板浮遊液上清添加時に比し、約45%増加)。血小板をアスピリンで前処理し筋蛋白崩壊を検討したところ有意な変化は認められず、このメカニズムに、プロスタグランデイン(筋崩壊を促進すると報告されている)の直接的な関与はないと考えられた。ii)トロンビンは、単独で筋蛋白崩壊誘導活性を有すると考えられた(トロンビン単独添加により培養液中のBCAA放出量は約30%増加)。この活性は、トロンビンの濃度依存性に亢進した。iii)トロンビンに対する特異的阻害剤であるhirudinを用いてstim・sup.に含まれるトロンビン自体の影響を検討したところ、stim supによる筋蛋白崩壊は、部分的に抑制される傾向を示した。これまでに、血小板や凝固因子が骨格筋蛋白代謝に影響を与えるとした報告はなく、両者は、敗血症やDIC、多臓器不全などの病態における筋蛋白崩壊のメカニズムに関与している可能性が示唆された。
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