研究概要 |
ラットにトロンビンを静注し、DIC(Disseminated intravascular coagulation)モデルを作成した。DIC状態から採取したひらめ筋からのチロシンおよびロイシン放出は亢進しており、DIC状態で活性化された血小板から筋崩壊促進分質が分泌される可能性があるという結果を得て、欧文誌に投稿し、受理され出版された。さらに筋培養液中のチロシンに加えて3-メチルヒスチジンの測定系を確立した。また蛋白合成を抑制するためサイクロヘキシミドを添加した系を作成した。細胞内プロテアーゼとして、プロテアゾーム活性に加えてカテプシン(B,H,L)活性を測定し、その変動を観察した。その結果、DIC状態の筋では蛋白合成がむしろ低下し、総蛋白分解は変化しないことが判明した。これは、細胞内プロテアーゼ活性が変化しない結果と対応していた。この結果を現在投稿中である。L6およびC2C12筋芽細胞を筋管細胞へと分化させることにより、蛋白代謝および細胞内プロテアーゼの変動の観察が可能であることが判明し、現在サイトカインの一つであるIL-6が筋崩壊促進因子として作用することを明らかにし、その機序を解明した。即ち、IL-6はlong-lifeproteinの半減期を短縮させ、蛋白崩壊を亢進させた。また、IL-6はプロテアゾームの活性型である26Sプロテアーゼ活性を増加させ、カテプシンBおよびL活性を増加させた。また、これらの変化が翻訳段階から生じることが判明した。以上により、IL-6が筋崩壊促進因子として十分の性格を有すると判断された。この結果について論文を投稿準備中である。
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