1.筋組織培養系:幼若ラットよりヒラメ筋を取り出し、筋蛋白崩壊を観察する組織培養システムを確立した。このbioassay系を用いて、ヒト洗浄血小板をトロンビン刺激して得られた上清中に筋崩壊誘導因子が含まれていることが示唆された。また、この因子は、プロスタグランディンとは異なることが判明した。 2.ラットDICモデル:ラットにトロンビンを反復静注することによりDIC状態が作成された。この状態のヒラメ筋を取り出し組織培養を行った所、みかけ上の筋崩壊が亢進していた。さらに、筋崩壊の特異的な指標となる3-メチルヒスチジンの測定系を確立し、蛋白合成の影響を除くためサイクロヘキシミド処置を加えて検討した。その結果、DIC下の筋では蛋白合成の抑制が主で、分解の亢進は生じていないことが判明した。ヒラメ筋(遅筋)のみならず長枝伸筋(速筋)でも同様の変化を呈した。 3.筋管細胞系:L6筋芽細胞を筋管細胞へと分化させた時、成熟筋と類似の形態的生化学的変化を呈した。この分化の過程で蛋白分解酵素が重要な役割を果たすことが判明した。C2C12筋芽細胞を用いて同様の実験を行い、筋管細胞への分化の過程でカテプシンのup-regulationとプロテアゾームのdown-regwlationが生じることを証明した。C2C12細胞が筋肉のモデルとしてより良好であることを確認した。 4.炎症性サイトカインの筋管細胞蛋白分解作用:C2C12筋管細胞を用いてTNF:IL-1、およびIL-6等の炎症性サイトカインが蛋白分解亢進作用を有するか検討した。IL-6のみが、蛋白分解を亢進させた。この際、IL-6はカテプシン(B. L)活性およびmRNAの増加、26Sプロテアゾーム活性の増加とプロテアゾームsubunit mRNAの増加を引き起こした。IL-6の蛋白分解亢進作用は、細胞内蛋白分解酵素系活性化を介することが判明した。
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