研究概要 |
本研究の目的は胎児肝を単純冷却保存する場合の至適条件をエネルギ-代謝の面より検討することにある。本年度はまず,保存中のエネルギ-代謝を推測する手段としてのマイクロダイアリシスの有用性をラット肝を用いて検討した。生理食塩水,ユ-ロコリンズ液及びUW液の3種の冷却保存液にて20時間の単純冷却保存を行ない,マイクロダイアリシスにて経時的に乳酸及びブドウ糖排出量を測定した。また保存前のグリコ-ゲン量の違いがどの様な差を及ぼすか,食餌摂取の影響についても検討した。ユ-ロコリンズ液ではブドウ糖を含有するためブドウ糖排出量は高値を示し,乳酸排出量も獲の2液に比しやや高値を示した。生理食塩水とUW液にはブドウ糖及び乳酸排出量に差を認めなかった。摂食ラットを用いUW液で冷却保存を行った場合,ブドウ糖及び乳酸排出量は絶食ラットに比し4〜5倍と著しい増加を認めた。保存前のグリコ-ゲン量は摂食ラットでは著しく多く,保存前後では明かな差がみられなかったが,絶食ラットでは低下を認めた。以上の結果より,胎児肝ではグリコ-ゲン含量が多いことから,ブドウ糖及び乳酸排出量を測定することは重要であること,また保存液の差異により両者の排出量に差がみられることが示唆された。保存液の違いがこの両者に影響を及ぼす因子として、保存液中に含有されるエネルギ-基質の位いが想定される。そこで次年度ではエネルギ-基質としてブドウ糖,果糖,庶糖,乳酸を各々添加した場合の影響を検討し,胎児肝での検討を行う予定である。
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