DAラットをDonorにまたLEWラットをRecipientとした小腸移植では無処置群は移植後6〜8日で拒絶反応で死亡する。しかしながらFK506 2mg/kg投与群では有意な拒絶反応の抑制効果を認めたが、FK506の副作用のため肺炎で移植後14〜25日で死亡した。次に、移植後のFK506の投与量を減量する目的でいくつかの実験を行った。まず小腸移植と同時に肝移植を行った。しかしながら手術侵襲のため術後早期にラットが死亡してしまったため、小腸・肝同時移植の実験を断念した。次に、抗原特異的寛容誘導の目的でdonor specific transfusion(DST)とFK506併用効果を検討した。即ち、DSTとしてdonor血を術前に輸血し、同時にFK506を5日間投与し、小腸移植を施行した。術後はFK506 0.3mg/kgと低量を2週間投与した。その結果、DST+FK506群は他の群にくらべ有意に生存期間の延長効果が認められた。そのメカニズムを解明する目的で、DST+FK506投与によるT細胞機能を検討したところ、Donor抗原に対して、IL-2産生およびcytotoxic T lymphocytes(CTL)は有意に低下しているが、third partyであるBUFラットの抗原に対してはT細胞応答は正常であった。即ち、抗原特異的にT細胞機能の低下が認められた。また、移植片の病理組織学的検討においても細胞浸潤等の拒絶反応は認められなかった。次に、Donorを術前にFK506を前処置することにより術後のFK506の投与量を減量できないかを検討した。実験は術前にFK506 2mg/kgを3日間Donorに投与し、移植後は低量である0.3mg/kgを2週間投与した。その結果、DonorのFK506前処置により有意に拒絶反応の抑制が認められた。そのメカニズムの解析では、FK506前処置により、Donorの抗原提示能が抑制が認められた。これらの成果に関しては日本移植学会、日本外科学会および日本消化器外科学会にて発表した。
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