研究概要 |
本研究において明らかにされたことは以下の如くである。 1 消化器がん(食道がん、胃がん、大腸がん)の手術時に得られた腫瘍あるいは正常組織を対象にnorthern blotting法を用いてtopoisomerase I及びIIのmRNAレベルを検討したところ、腫瘍組織のほうが隣接正常組織に比べてtopoisomerase I及びIIのmRNAレベルが高い傾向にあった。 2 乳がん組織におけるtopoisomerase IIの発現レベルとadriamycin(topoisomerase II inhibitor)の臨床効果とを比較検討したところ、両者の間に正の相関関係を認めた。またこのことはヌードマウス可移植性腫瘍系を用いた実験系でも確認された。 3 消化器系ヌードマウス可移植性腫瘍を用いてin vivoにおけるCPT-11(topoisomerase I inhibitor)とadriamycin(topoisomerase II inhibitor)の併用効果を検討したところ、両薬剤同時投与では併用効果を認めないが、CPT-11→adriamycin投与時に両者の相乗効果を認めた。 4 相乗効果の機序の解析として腫瘍をCPT-11(topoisomerase I inhibitor)で処理した後にtopoisomerase IIの発現量の変化を経時的に検討したところCPT-11処理24-48時間後に両薬剤の相乗効果を認めた腫瘍においてはtopoisomerase II発現量の増加を認めた。 5 CPT-11あるいはadriamycin処理によって大腸がん細胞株(WiDr,Colo320DM,Colo201)にapoptosisが誘導されることを証明した。また、誘導の程度とP53タンパク質の発現程度を検討すると発現程度の高いものほどapoptosisの誘導が多かった。 6 apoptosisの誘導の観点から両薬剤併用時における有効薬剤濃度を検討すると、必ずしも高濃度併用時において誘導が多く起きるわけではなく、むしろapoptosis誘導には至適濃度が存在することが明らかとなった。
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