研究概要 |
体重200gr前後のWister系雄ラットを用い、エ-テル麻酔下に直径4mmの生検用ドリルで肝組織を採取し、一定体積(長さ4.5mm)の電気インピ-ダンスを測定した。測定装置はYHP製インピ-ダンス・アナライザ-(4194A)を用い、測定は正弦波応答法により、4電極法で行った。2℃,20℃,30℃,36℃の各温度について、6時間にわたり連続測定た。このインピ-ダンス値から生体の等価電気回路に基づき、細胞外液低抗(Re)、細胞内液抵抗(Ri)、細胞膜容量(cm)の各パラメ-タを算出した。 次に、同様の方法で採取した肝組織について経時的に ^<31>pーNMRスペクトルを測定した。測定装置はINMーGSXーFT NMR400MHzを用い、測定は25℃で2時間行い、肝細胞内高エネルギ-燐酸化合物の変化を観察し、前述の電気インピ-ダンスの各パラメ-タと比較検討した。 ReおよびCmは経時的に変化し、各々の値は最大値をとった後にPlateauとなった。また、ReおよびCmが最大となる時間は、保存温度が低下するに伴い延長した。さらに各々の時間と保存温度とは指数関数的に負の相関関係を示した。 ^<31>pーNMRスペクトルは、7つの燐酸化合物のピ-クが認められ、ATPレベルは摘出後急速に減少し、摘出20分後には検出されなくなり、Piの化学シフトは右方移動し、細胞内pHは酸性に傾いた。この酸性化傾向は60分後に停止した。 以上の結果から、阻血後ある一定時間までReおよびCmが増加したのは、細胞外液量の減少による細胞外液低抗の増加および細胞の膨化による細胞膜容量の増加を反映したものと考えられた。Reが最大となった時点で細胞の膨化は頂点に達し、その後徐々に細胞崩壊が始まったものと推察された。今回の実験結果から、電気インピ-ダンス情報から虚血に伴う細胞の変化や組織構造の変化が推定できる可能性が示唆された。
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