悪性腫瘍に対する化学療法の有効性を高めることを目的としていろいろな制癌剤感受性試験が開発され、臨床応用が試みられている。個々の癌組織の制癌剤感受性に基づいて投与薬剤を決定することは、今後の治療の進むべき方向であるが、現時点では万人が認める制癌剤感受性判定手段はない。本研究では、従来の制癌剤感受性試験よりさらに有用な制癌剤感受性試験を新たに開発することを目的とした。制癌剤感受性の指標として、新たに細胞内カルシウムイオンCa^<2+>濃度の変動に着目し、制癌剤感受性試験としての有用性をin vitroおよびin vivoの実験系で評価した。今までわれわれが行なってきた、in vitroのsuccinate dehydrogenase in hibition test(SDI法)、ATP法やin vivoのsubrenal capsule assay(SRC法)と比較を行なった。さらに臨床応用に向けて、迅速、簡便、確実な試験方法を確立することを試みた。 細胞内カルシウムイオンの変動が制癌剤による癌細胞の殺細胞効果とよく相関するという新知見を得て、細胞内カルシウムイオン濃度の変動が制癌剤感受性を判定する新しい指標として有用であることが明らかとなり、今後、有用な制癌剤感受性試験として応用できると考えられた。 現在、胃癌を中心とした消化器癌組織による制癌剤感受性を細胞内カルシウムイオンの変動を指標とした試験により判定し、臨床効果との相関を検討中である。
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