腫瘍血管内皮細胞の特性を明らかにするため、ヒト腫瘍組織からの血管内皮細胞の分離・培養系を確立し、種々の解析を行った。 《腫瘍血管内皮の免疫学的特性》手術時に摘出した肝細胞癌および肉腫からコラゲナ-ゼ法にて細胞を浮遊後無血清特殊培地及び限界希釈法を用いて腫瘍由来血管内皮細胞のクロ-ン化に成功した。この細胞はFactorVIII抗原陽性、ICAMー1、ELAMー1陽性で、無血清培地下で単層敷石状に増殖した。また低濃度のIFNーγにより増殖は促進されたが、ILー1、TNFーαでは逆に抑制されることが解った。またIFNーγ刺激でICAMー1の発現は著明に増強した。これらの結果はヒト臍帯静脈内皮細胞とほぼ同じであった。《免疫細胞との相互作用》ヒト末梢血リンパ球およびLAK細胞の内皮細胞への接着を観察した。LAK細胞は腫瘍血管内皮に強個に接着するとともに内皮の透過性を有意に上昇させ内皮細胞の一部を傷害することが判明した。これはLAK細胞の抗腫瘍メカニズムの一つと考えられる。《腫瘍血管内皮の表面抗原の検索》現在培養腫瘍血管内皮の細胞膜分画を分離し、Western blottingにて正常血管内皮細胞との相違を解析中である。これまでのところ、腫瘍血管内皮に特異的な蛋白は見つかっていない。《免疫化学療法前後における表面抗原の変化》系々は進行胃癌を中心に術前局所免疫化学療法を行っており、これに伴う腫瘍血管内皮の細胞接着分子の発現変化を調べている。局所療法により癌細胞のS期標識率の低下した症例では腫瘍部の血管内皮で強いICAMー1の発現やリンパ球浸潤が観察された。 今後更に腫瘍血管内皮細胞の解析を細胞分子レベルで推し進め、腫瘍血管内皮をタ-ゲットとした有豊な免疫化学療法の開発を目指していきたい。
|