平成3年度で計画したドナ-リンパ球術中門脈内投与によって生着延長が得られたレシピエント血清を用いた研究のうち、免疫学的検討はほぼ終了した。その結果、(1)血清中に認められた免疫抑制因子はキラ-T細胞のinduction phaseでその効果を発現し、effector phaseでは抑制活性を示さない(2)BN刺激により活性化されたLEWリンパ球でこの抑制は吸収されるが、ドナ-であるBNリンパ球では吸収されないことから、この抑制物質はイディオタイプを認識する物質であること(3)LEWリンパ球のILー2、インタ-フェロン産生には制御効果を示すがILー3、ILー6産生は抑制しないことからこの抑制因子はヘルパ-T細胞、なかでもタイプ2のヘルパ-T細胞を抑制することにより活性を示す可能性が示された。一方、腎移植以外に他の臓器での効果を検討する目的でラット心移植での効果を検討した。BNラットの心臓をLEWラット腹腔に移植したところコントロ-ル群(n=11)は平均7.3±0.3日で拍動が消失した。他方、ドナ-リンパ球1×10^8個を門脈内に投与することにより平均11.2±1.0日(n=5)と延長効果を認めた(P<0.05)。この効果は腎移植で認められたと同様に抗原特異的であった。心では腎に比べて延長効果は著明ではなく、臓器による抗原性の違い等が示唆される。さらに、大動物への応用を考慮し、雑種成犬を用いて腎移植術直後にドナ-脾臓よりリンパ球2×10^9個を経門脈的にレシピエントに投与した。コントロ-ル群(n=6)平均生着日数9.4±2.9日に比べ、平均13.8±3.4日と若干の生着延長効果を認めたが統計学的優位差は認めなかった。大動物による実験は時間と経費もラットを用いた実験に比べ格段にかかることから、ラットを用いた研究で現行の免疫抑制剤との併用効果が得られれば将来的に施行することとする。
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