研究概要 |
平成4年度(最終年度)の研究計画のうちin vivoでの検討および臨床応用への試みはほぼ終了し得た。その結果、(1)既に拒絶反応が進行している状態(移植後4日目)に血清を移入し、この因子が拒絶反応に対する治療効果を持つか否かの検討では、コントロール平均生着日数7.8±0.2日に対して、4日目から連続3日間1mlの血清投与により、平均9.5±1.2日と優位差はないものの延長傾向を認めた。(2)免疫抑制剤FK506との併用効果については、FK506(0.2mg/kg)の3日間(day-1,0,1)単独投与では心移植において平均11.2±2.7日であるのに対してドナーリンパ球門脈内投与との併用でも10.6±1.7日と併用効果を認めなかった。FK506は主にT細胞を抑制することにより免疫抑制活性を示す。昨年度の研究によりドナーリンパ球門脈内投与により血清中に免疫抑制因子(おそらく抗イヂオタイプ抗体)が産生されるが、T細胞抑制を介してB細胞機能も抑制されたためにこの因子が産生されず、その結果併用効果が認められなかったと考えられた。そのことを証明するために、抗T細胞モノクローナル抗体を用いてT細胞を選択的に消去した状態で、ドナーリンパ球門脈内投与により生着延長が得られるかを検討したところ延長効果は得られなかった。このことはドナーリンパ球門脈内投与により誘導される抑制発現にはT細胞が必要であることを示している。一方、抑制因子の生化学的特徴について検討したところ、preliminaryであるが抗イヂオタイプを認識するIgGであるという結果を得た。しかしこれも再度確認する必要がある。以上、本年度については臨床応用への試みに重点をおいたが、抑制因子の産生を妨げない免疫抑制剤との併用を試みる必要があると考えられる。
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