ヒト神経芽細胞腫移植株の腫瘍から検出したフェーリエ変換^<31>P-NMRのスペクトルを分析した。無機リン酸とリン酸化合物を検出した。化学シフトの相違から、スペクトルはモノエステル、無機リン、クレアチンリン酸、ATP-γ、α、βに分類可能であった。シスプラチン投与時の^<31>P-NMRの変動は、投与15分、30分、1時間後にクレアチンリン酸の上昇と無機リンの低下がみられた。また、24時間後には正常細胞、つまりコントロール群に近い状態に戻る傾向を示した。Standard Bettlle Colombus Method方式により、シスプラチンはLD_<50>の1/3量を投与している。スペクトルから腫瘍細胞はシスプラチン投与により抗腫瘍効果を受けて、活発な正味の反応であるクレアチンリン酸→クレアチン+無機リンの流れが大幅に抑制され、正常細胞に近い状態となった。VP16はLD_<50>の1/3量で変化が著明でなかった。LD_<50>の1/2量に増量した。スペクトルの変動を分析すると、10分後、1時間後ではコントロールに比較しても著明な変化を認めない。しかし、24時間後ではクレアチンリン酸及びATP-βの平低化が著明であった。VP16投与により、腫瘍細胞のviabilityの低下が考えられた。現在まで上の2薬剤の投与結果のみではあるが、シスプラチンではより制癌効果が顕著であり即効性があると考えている。VP16は殺癌細胞効果が主であるが、投与10分後、1時間後の変化はあまりなく、即効性はシスプラチンに比較してやや劣るように考えられる。今後もこれらの効果については他の薬剤によるスペクトル変動を分析し、経時的な観察を行い、抗腫瘍剤の発現開始時間・作用持続時間を明確にしたい。
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