研究概要 |
18例の急性肝不全症例に対して、血漿交換に加えて血液持続濾過(CHF)を施行した。治療前後に血清・濾過液を探取し、これを中分子量物質の測定のため、TSKG2000SWを用いた高速液体クロマトグラフイーに用いた。肝不全血清では停滞時間45分以後、推定分子量4500以下で8以上の異常なピークが観察された。これらのピークを積算して算出した血液濾過器の節い係数SCをみると、推定分子量2200で0.54であり、以下1150で0.56,730で0.83,490で0.67そして150では0.25と中分子量物質の良効な濾過能が確認された。これら高速液体クロマトグラフィー上の中分子量ピークの血中推移は、よく意識レベルと相関し、クロマトグラフ上全く正常化した症例では意識レベルもほとんど回復し、家人と会話可能の状態となった。しかし、この効果は一過性であり、血液濾過を中止すると再び、異常中分子量物質の血中内増加がクロマトグラフ上観察され、意識レベルも低下した。全体として意識レベルの改善によるCHFよりの離脱例は9例(50%)であり、救命例は4例(22%)、残りの5例は多臓器不全により死亡した。以上よりCHFと血漿交換を併用し中分子量物質の浄化を図ることにより、急性肝不全症例に対してかなりの長期にわたり肝機能補助が可能であることが判明し、中分子量物質の血中蓄積が急性肝不全の主要な死因である脳浮腫の誘因の一つとなっていることが示唆された。今後さらにこれら異常中分子量物質の本能の解明が期待される。
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