研究課題/領域番号 |
03670607
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加地 利雄 東京大学, 医学部・(病)第1外科, 助手 (40185765)
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研究分担者 |
畠山 卓弥 東京大学, 医学部・(病)第1外科, 医員
小林 一博 東京大学, 医学部・(病)第1外科, 助手 (80205450)
重松 宏 東京大学, 医学部・(病)第1外科, 助手 (40134556)
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キーワード | 腹腔内多臓器同時移植 / ゴアテックス製代用血管 / 仮性内膜肥厚 / FKー506 |
研究概要 |
腹腔内多臓器同時移植時の血管吻合部の治癒過程を観察するモデルとして雑種成犬を用いて次のような慢性モデルを作成した。すなわち、腹部大動脈を切離し、6mmゴアテックス製代用血管を中枢側は端々吻合、末梢側は端側吻合で間置した後、6ヶ月飼育した。これらのモデルをコントロ-ル群と免疫抑制剤投与群とに分け、吻合部晩期閉塞の主たる原因である仮性内膜肥厚に対する効果を検討した。また経過中FKー506の血中濃度(全血)および細胞性免疫の指標としてリンパ球幼若化反応(PHA)を測定し、同時に末梢血液中の血球数や、血漿蛋白濃度や脂質濃度も測定した。平成3年度に手術を施行したのは21頭であったが、人工血管移植に対する免疫抑制剤のプロトコ-ルに関する報告がないため、6頭に対してFKー506を術直後より連日0.2mg/kgを筋注にて投与したが、免疫力低下によりすべて1ヶ月以内に感染死した。またコントロ-ル群のうち3頭が経過中に感染死した。従って6ヶ月生存し得たモデルはコントロ-ル群が4頭、FKー506投与群は8頭であった。FKー506の投与量は試行錯誤的ではあったが、週1回0.1mg/kg筋注群と週1回0.2mg/kg筋注群としたところ、すべて生存し、各群で5頭、3頭となった。現在までのところコントロ-ル群およびFKー506週1回0.1mg/kg筋注群で各々1頭ずつ仮性内膜肥厚によりグラフト閉塞をきたしていた。FKー506投与により血球数や血液生化学的検査に変化はなかったが、光顕的には血中濃度にほぼ比例して吻合部の仮性内膜肥厚はコントロ-ル群に比べ有意に抑制されていた。これはリンパ球幼若化反応(PHA)も低下していることにより、中膜の平滑筋細胞の内膜下への遊走および増殖に関与しているマクロファ-ジをはじめ免疫担当細胞のactivityをFKー506が抑制したためと考えられた。
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