研究分担者 |
新本 春夫 東京大学, 医学部(病), 医員
畠山 卓弥 東京大学, 医学部(病), 医員
布川 雅雄 東京大学, 医学部(病), 医員
大城 秀巳 東京大学, 医学部(病), 医員
安原 洋 東京大学, 医学部(病), 助手 (50251252)
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研究概要 |
臓器移植の際の血管吻合部治癒過程において認められる吻合部内膜肥厚には,宿主側の免疫学的なメカニズムと吻合部の形態の両者が関与していることが前年度までに判明した.前者による内膜肥厚は腹腔内諸臓器を生着させるのに必要な濃度より低い濃度の免疫抑制剤FK506で抑制可能であったが,後者については端側吻合部のTOE側とHEEL側の内膜肥厚に差があるため,ずり応力等が関与している可能性が示唆された.そこで今年度は,異なるずり応力による各種サイトカインの吻合部位に対する作用の差,とくに内膜肥厚の主たる構成成分である平滑筋細胞の遊走,増殖を促進させるといわれている血小板由来成長因子PDGFの作用に着目し,以下の実験を行うこととした.当初,前年度のモデルにしたがって雑種成犬を用いていたが,免疫組織学的検討が不確実となることが判明したため実験動物を変更した.すなわち3〜4kgの雄性日本白色家兎の腹部大動脈に内径3mm,長さ3cmのEPTFEグラフトを中枢側を端端吻合,末梢側を端側吻合で間置した吻合部内膜肥厚モデルを作成し,以下の3群に分けて検討した.1.コントロール群 2.抗PDGF抗体投与群:抗PDGF抗体 持続静注 3.免疫抑制剤+抗PDGF抗体投与群 これら3群を4週,8週,12週と3期間飼育の後,吻合部の肉眼的検討および抗マクロファージ抗体や抗平滑筋細胞抗体,抗PDGF抗体を用いた免疫染色による組織学的検討,画像解析装置による内膜肥厚の定量的測定などを行う予定であった.しかし家兎による吻合部内膜肥厚モデルの作成に予想した以上の時間を費やしたこと,抗PDGF抗体の持続静注の投与量,投与期間等が確立されていなかった等の問題があり,現在までのところ,具体的な結論に至っていない.ただし,今後2〜3ヵ月の間に結果が得られる予定であり,現在ひきつづき実験を遂行中である.
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