| 研究概要 |
小腸癌の発生は極めて少ないが、その臓器特異性を解明する目的で、wistar系雄性ラットを用いて、回腸を遠位結腸間に間置したモデルを作り、術後2週目よりMNNGを2.5mg/day注腸投与した後、10、20、30、40週目に屠殺し、回腸および結腸の粘膜上皮細胞の細胞動態の解析および粘膜内キサンチンオキシダーゼ活性の測定をおこなった。癌腫発生率は生食群0%、MNNG注腸群では20週54.5%、30週群35.0%、40週群は52.6%であった。MNNG群における間置回腸と遠位大腸の部位別の40週後の腫瘍発生率をみると、遠位結腸の68.4%に比して、間置回腸では、5.3%と有意に低率であった。また癌腫発生率をみても間置回腸は5.3%と遠位大腸の52.6%に比し有意に低率であった。上皮の細胞動態の解析はIduおよびBrdUを用いたDovble labeling法によっておこなった。MNNG投与群では間置回腸におけるG-zone ratioおよびLabeling Indexは回腸に比し有意な増加がみられ、また腸粘膜上皮細胞の腺窩よりの脱落時間(Mig)の有意な短縮もみられた。間置回腸と遠位大腸の比較では細胞増殖に関するLabeling Index,S-phase transit time,potential doubling timeおよびG-zone ratioに差はみられなかった。しかし粘膜上皮細胞の脱落時間をみると、遠位大腸の91.4±21.1時間に対し、間置回腸では40.6±8.2時間と極めて速い傾向が認められた。またXanthine oxidase活性をみると遠位大腸に比し間置回腸ではその活性が有意に高い結果が得られた。
以上より小腸にみられる発癌の抵抗性は、小腸粘膜上皮細胞の腺窩底より表層への速い脱落時間および高いXanthine Oxidase活性が内因的発癌防御機構として関与している可能性が示唆された。
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