小腸の臓器特異性を解明する目的で、回腸を遠位結腸間に間置したモデルにMNNGを注腸投与し、回腸および遠位結腸粘膜上皮の細胞動態およびキサンチンオキシダーゼ活性の解析を行った。 平成3、4年度では主に回腸および結腸における発癌率と粘膜上皮の細胞動態の解析を行った。その結果間置回腸では腫瘍発生率、癌腫発生率ともに遠位結腸に比して低率であり、回腸での発癌抵抗性が明らかになった。またdouble labelingを用いた細胞動態の解析では、間置回腸のlabeling index、potential doubling time、S-phase transit time、G-zone ratioは遠位結腸のそれに比して差はみられなかった。しかし粘膜上皮の脱落時間は遠位大腸の91.4±21.1時間に対して、間置回腸では40.6±8.2時間ときわめて速かった。つまりもし回腸の腺窩細胞にDNA損傷が生じても、次々と新生する上皮細胞に押し上げられ脱落するため発癌が抑えられる可能性が示唆された。 本年度は回腸および遠位結腸粘膜内のキサンチンオキシダーゼ活性を液体クロマトグラフィーにて測定した。その結果間置回腸粘膜のキサンチンオキシダーゼ活性は4.28±0.75nmol/protein mg/minと遠位結腸の0.95±0.51nmol/protein mg/minに比して有意に高値をしめした。小腸粘膜にはキサンチンオキシダーゼを産生源とする活性酸素が多く、障害を受けた細胞がこの活性酸素により殺細胞効果をうけている可能性も考えられ、これが発癌防御機構となっている一つであることも推察された。
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