研究概要 |
I.実験方法 1.膵ランゲルハンス島の分離・分散方法:実験動物として8〜10週令雄性Fischer系ラットを使用し、膵ランゲルハンス島(以下ラ島)の分離は、Lacyらの方法に準じコラゲナ-ゼ消化法で行った。分離採取したラ島の分散は0.02%EDTA、およびディスパ-ゼ液を用いるEDTAーディスパ-ゼ法で行った。2.凍結・解凍方法:凍結用培地には15%Me_2SOを添加した10%FBS加RPMI1640を使用した。凍結用tubeに0.5mlの凍結用培地、およびラ島1,000個より得られた分散ラ島を入れ1℃/分、25℃/分の速度でー70℃まで冷却、以後は液体窒素内で2週間保存した。解凍は37℃恒温漕内で行い、Hanks液で3回洗浄した後、10%FBS加RPMI1640培地を用い、5%CO_2ーair恒温漕内で静置培養した。3.インスリン分泌能の検索:解凍後の培養で形成した10個の偽ラ島を用い、30・300mg/dlグルコ-ス負荷によるshort time incubation法で検索した。4.移植:STZ誘発糖尿病ラットの腎被膜下に1,000個の偽ラ島を同種同系移植し、非分散培養ラ島移植群と比較検討した。 II.結果 1.偽ラ島の形成、ならびに組織学的検討:凍結ラ島細胞は解凍後の培養2〜3日目頃より偽ラ島を形成し始めた。しかし、その形態は分離ラ島の培養で観察されるような球形ではなく、また全体的に小型で細胞密度も粗な印象であった。組織切片を作製し、HE染色、免疫組織化学染色を施し観察すると細胞変性はみられず、またA・B細胞の配列は正常とほぼ同様であった。2.偽ラ島のインスリン分泌能:30・300mg/dlグルコ-ス負荷によるshort time incubation法での偽ラ島群の結果では、対照とした非分散培養ラ島とほぼ同様のインスリン分泌能を保持しており、また高濃度グルコ-ス刺激にも良好に反応し得た。3.同種同系移植:1,000個の偽ラ島移植では1〜2日目より血糖の改善がみられ、また尿量、尿糖は1週目で正常値を示した。
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