研究概要 |
腫瘍の画像診断は診断機器の発展により著しく進歩したが、その画像から得られる陰影は、存在診断としてかなりの威力を発揮するものの質的判断としてはなお困難な場合が多いと考えられる。腫瘍関連抗原に対するモノクローナル抗体を画像診断に応用することは、抗原一抗体反応という特異性の高い反応を利用するため、質的診断に最も有用なものと期待される。我々はCEAに対するモノクローナル抗体CEA102を作製し、その^<131>1標識抗体を用いて20例の大腸癌患者の画像診断を試みた結果、21病変のうち17病変の診断が可能であった。特に直腸癌の局所再発と術後の肉芽性変化との鑑別に有用性を示した。また術前に^<131>1標識CEA102を投与し、切除標本のAutoradiogramをFCRを用いて行った結果、原発巣および微小な肝転移に抗体の集積を観察することができた。以上の結果は、当診断法が質的診断法として有用であることを示しているが、Sensitivity,副作用、診断に時間を要する、など臨床応用にあたっては未だ多くの問題をもっている。そこで抗体の分画の作製、種々の核種の使用、標識法の改良、診断用機器の開発など多くの試みが行われているが、今回画像診断の改良のために、1)抗体のF(ab')_2フラグメントの使用、2)核種として^<111>lnなどの使用、3)診断用機器としてEmission CTを導入する、など当画像診断の一般化に向けて検討を行った。F(ab')_2はwhole lgGに比べ、血中よりのクリアランスが2倍早く、抗体投与後1日目で腫瘍の検出が可能であったが、whole lgGは4-7日目と検出に時間を要した。つぎに診断用機器としてEmission CT導入するために、核種として^<111>lnの使用を試みた。^<111>lnは^<131>1に比べ、肝などの網内系に取り込まれ、1週間後もなお抗体の集積が腫瘍の集積を上回った。従って肝転移などの診断には不適当であったが、Emission CTを用いることが出来るため直腸癌の局所再発の診断に有用性を示した。
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