研究課題/領域番号 |
03670617
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
山本 明 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (20144298)
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研究分担者 |
平野 正満 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (90208843)
藤村 昌樹 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (50115771)
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キーワード | laminin / laminin receptor / receptor ligand / YIGSR / 接着阻害 / 癌転移の予防. |
研究概要 |
1、Ehrlich腹水癌細胞のlaminin receptorとlamininの結合は、結合したlamininを検出する方法でみるかぎり、すべての癌細胞で同時に生じてはいないこと。また、lamininとmitomycin Cの併用投与で、laminin 10μgと100μgの1回投与では有意に100μg投与で生存期間の延長が得られたが、laminin10μgの3回投与のほうがより長期の生存が得られたこと。さらにlamininの単独投与ではむしろ生存期間の短縮をみたこと。これらを総合すると、laminin receptor ligandとしてlamininをもちいた接着障害による腹膜移転の予防は、(1)laminin receptor数(癌細胞数)と至適量のlaminin(over doseにならない)の投与。(2)上記投与量を複数回投与することによる全receptorの飽和 が条件であり、lamininの総投与量が多ければより効果的であるとはいえない。そして余剰のlamininは増殖、転移を促し、むしろ危険であると思われた。 2、laminin分子中receptorとの結合部位とされるアミノ酸配列を有するpeptideが合成されている。それらのなかですでにマウスメラノーマで肺転移形成を抑制したとして報告されているYIGSRpentapeptideをもちい、同様の検討を加えた。その結果、(1)YIGSR10μg、100μg、500gμ、1000gとmitomycin C 10μgの併用投与のいずれでも、mitomycin C 10μgの単独投与以上の生存期間の延長は得られず、有効に作用しているとはいえなかった。(2)YIGSRの単独投与では、lamininのような生存期間の短縮はみられなかった。これらの結果から(1)Ehrlich腹水癌ではYIGSRが結合できるreceptor siteが存在しない。(2)YIGSRの投与量が少ない。(3)YIGSRの投与とmitomycinの投与間隔(本実験では2時間の間隔)に問題が残されている。などが考えられた。両実験から、すべての癌細胞のlaminin receptorに共通したligandを見いだすことなしにanti-adhesion therapyの実際応用は困難であることが推測され、今後の検討課題を残した。
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