研究概要 |
われわれはこれまでに肝ミトコンドリアのグルタチオンペルオキシダ-ゼ系の活性酸素除去能力を解析してきた。本年度は肝細胞質のグルタチオンペルオキシダ-ゼ系について解析し、以下の知見をえた。 (1)肝細胞質にはミトコンドリアと同様にmMレベルの還元型グルタチオンが存在する。また細胞質グルタチオンペルオキシダ-ゼの活性も2.24min^<-1>(mg/ml)^<-1>とミトコンドリアに暦らず高いものである。従ってこの両者によって規定されるグルタチオンペルオキシダ-ゼによる初期活性酸素除去能力は6ー7μmol/min/mlに達する。 (2)活性酸素の除去にともなってグルタチオンは酸化型へと変化するので活性酸素除去能力は徐々に低下し、一定の定常レベルに達する。従って一定時間経過後のグルタチオンペルオキシダ-ゼ系による活性酸素除去能力はこのグルタチオンの定常レベルに依存している。この定常レベルはグルタチオンの初期濃度ではなく、NADPHを介したグルタチオンの再還元系の能力に依っている。肝細胞質にはグルタチオン再還元系の酵素であるG6PDH,Malic enzymeおよびその基質であるG6P,Malateとも豊富に存在する。 最近、臓器虚血障害過程において血流再開時に発生する活性酵素による障害が注目され、抗酸化剤などの投与が有用であるとする報告がみられる。上に示したグルタチオンペルオキシダ-ゼによる活性酸素除去能力の解析結果は外因性投与によらない内因性の活性酸素除去系が肝細胞内に豊富に存在することを示すものである。
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