研究概要 |
部分肝切除を行なったラットにおいて,FK506の肝再生における効果に対する研究を行なった。ウィスター系雄性ラットにVehicle筋注群と3種の異なった濃度のFK506を筋注した群の4群において比較検討した。部分肝切除3日前から肝切除7日目までを観察期間とした。FK506投与群では残存肝の再生率は全群間で有意差は認められなかった。残存肝のDNA合成はDNA合成が最も盛んとなる肝切除後24時間において,FK投与群において抑制された。観察期間の間,肝切除後24時間以外の時期においては全群間で有意差が認められなかった。しかしながらDNA含有量は,FK投与群で抑制はみられなかった。Mitotic indexは各群間で有意差を認めなかった。残存肝のタンパク含有量は,肝切除前は全群間で有意差が認められなかったものの,肝切除後はFK投与群で有意に増加した。肝切除後の肝機能の経時的変化は各群間で有意差を認めていない。FK投与群では食餌摂取量の濃度依存性の減少をきたした。これはFK投与後肝切除前において有意に減少し,この有意の減少は肝切除後5日目まで持続した。また,FK投与群では体重減少も生じた。FK投与後肝切除前に体重減少がみられ,肝切除後の体重増加もVehicle投与群と比較すると遅かった。GOTなど5種類の肝機能測定を行なったが,全群間で同様の経時的変化を示し有意差は認められなかった。これらの実験により,FK506は肝再生に対し促進的な作用は有しないと考えられた。また,食餌摂取量の減少及び体重減少は臨床的に用いられるFKの濃度においては少なかった。FK506は肝再生に対し反作用的には働かないと考えられた。
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