研究概要 |
我々は正常肝内癌細胞に対しては抗癌剤の経動脈的単独投与が最も抗腫瘍効果が高いことを報告し、この結果は投稿中である。今回は、肝細胞癌切除後の再発防止対策として、より臨床モデルに近い実験系である再生肝内癌細胞に対する抗腫瘍効果について検討した。1)化学療法の効果:2カ月齢WKAラットを用いて2/3肝切除を行い、経門脈的に腫瘍細胞RBT-1(ラットの膀胱腫瘍)を2×10^4個移植する。化学療法は処置直後、1日後、2日後、3日後、5日後、7日後に経動脈的にアドリアシンを4/3mg/kgずつ投与した。各群10頭の平均生存日数は、非投与群は21.0日であり、アドリアシン投与群も直後19.9日、1日後20.0日、2日後19.5日、3日後20.5日、5日後20.7日、7日後投与群20.7日と各群間の生存日数に有意差を認めなかった。2)免疫療法の効果:化学療法前4,3,1日の隔日3介にOK-432(1KE/0.2ml saline)を脾臓内注入した後に2/3肝切除を行い、経門脈的に腫瘍細胞RBT-1を2×10^4個移植し、翌日化学療法(経動脈的アドリアシン投与)を行った。各群10頭の平均生存日数は、非投与群22.6日、アドリアシン単独投与群20.0日、OK-432単独投与群38.6日、OK-432+アドリアシン投与群30.9日であり、OK-432単独群投与群が他の群より生存日数が有意に長く、OK-432+アドリアシン投与群も非投与群、アドリアシン単独投与群より生存日数が有意に長かった。以上、肝再発期での化学療法は効果なく、免疫賦活剤がきわめて有効であることが、今回研究で明らかとなった。この結果は、投稿準備中であり、現在は、再生肝内癌細胞に対する化学療法抵抗性の解明と免疫療法が有用である機序に関して検討中である。
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