研究概要 |
肝細胞切除後の再発防止対策として、より臨床モデルに近い実験系である再発肝内癌細胞に対する化学療法あるいは免疫療法の抗腫瘍効果について検討した。1.化学療法の効果:WKA系ラットに68%肝切除を行ない、残存肝に経門脈RBT-1癌を2×104個移植する。化学療法は経肝動脈的にアドリアシンを4/3mg/kg、移植直後、あるいは1日後、2日後、3日後、5日後、7日後に投与した。各群10頭の平均生存日数は、非投与群は21.0日であり、アドリアシン投与群も直後投与19.9日、1日後20.0日、2日後19.5日、3日後20.5日、5日後20.7日、および7日後投与群20.7日と各群間の生存日数に有意差を認めなかった。2.免疫療法の効果:OK-432 1KEを隔日3回脾臓内投与したラットに68%肝切除を行ない経門脈的にRBT-1癌を2×104個移植した。化学療法を行なう群では、以上の処置後24時間目に経肝動脈的にアドリアシンを4/3mg/kg投与した。各群10頭の平均生存日数は、非投与群は22.6日であり、アドリアシン単独投与群20.0日、OK-432単独投与群38.6日、およびOK-432+アドリアシン投与群30.9日であり、OK-432単独投与群の生存日数が他の群より有意に長く、併用群の生存日数も非投与群、アドリアシン単独投与群より有意に長かった。以上、肝再生期における化学療法には制癌効果はなく、免疫賦活剤が極めて有効であることが判明した(J Surg Res,submitted)。溶連金製剤OK-432等の生体反応修飾物質(BRM)は、かつて肝切除術後の肝不全対策が急務となっていた次期に、我々はこれを脾臓内に投与することにより肝不全を防止しうることを実験的に確認した(J Surg Res 40:43-48;1986)。また、臨床応用も行ない、これのみで術後肝不全症例を救命したこともあった。従って、肝不全対策としても用いうるOK-432は、残存肝内癌細胞に対して有効であるため、今後の臨床応用が期待される。
|