研究概要 |
肝切除時の肝機能の総合的評価法の確立を目的としている。 F344ラットにthioacetamideを12週間腹腔内投与して作成した肝硬変ラット群(現在n=40)と正常ラット群(n=36)の2群に70%肝切除をエ-テル麻酔下に施行した。肝切除術後に肝硬変群は3例が肝不全により死亡したが、正常ラット群は全例生存中である。肝切除手術時に切除された肝臓は重量を測定し70%肝重量と評価し、経時的肝再生度の基準とした。肝切除前後に採血し、一般肝機能検査と共に、血中のケトン体,7αーhydroxycholesterol,フィブロネクチンの変動を検討している。 肝切除前及び切除後1、3、7、14、28日後にエ-テル麻酔下に開腹し腹腔大動脈より動脈血を採取し、肝重量を測定した。肝切除時の肝重量との比較より肝再生率を計算すると、肝硬変群が正常群より遅延していた(1日目:28.4vs38.6%;3日目:44.8vs58.4%)。動脈血はクエン酸Naを添加後、冷却遠沈して血漿を得て動脈血中ケトン体比、フィブロネクチン値を即時に測定した。動脈血中ケトン体比は両群とも術後1日目に最も低値を示し(0.29vs0.31)、以後両群とも回復するものの肝硬変群は正常群に比較して回復度が悪かった(7日目:0.55vs0.70,p<0.05)。フィブロネクチン値は術前より肝硬変群が正常群より低値であった(344.7vs444.9μg/ml,p<0.05)。術後の変動は両群とも類似していたが、動脈血中ケトン体比と異なり、術後1日目に動脈血中ケトン体比が著明に低下しているにもかかわらず、フィブロネクチン値は増加していた(447.8vs511.4μg/ml)。7αーhydroxyーcholesterol値、及び従来の肝機能検査項目(ablumin.total bilirubin,GOT等)の測定は現在進行中である。 臨床研究においては肝切除患者において術前、術中及び術後に動脈血を経時的に採取し測定を行っており症例数を追加検討中である。
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