研究概要 |
drug carrierとして用いている水酸アパタイト(HAp)細粒の形状について光学顕微鏡,電子顕微鏡にて観察する一方、レーザー回折法にて粒度分布を測定した。このHAp細粒の粒度分布は23〜59μmの間に73.6%が分布し、その粒子径の平均は36.1μmであり、電顕的には微粒子が凝集した表面凹凸不整の多い球状物質としてみられた。このHAp細粒をdrug carrierとして用いるため雄性ドンリュウラットを用い腹腔内投与後の組織学的変化を経日的に検討した結果、投与3日後ではHAp細粒はfibroblastに取り囲まれ炎症細胞浸潤を僅かに認めたが、7日後では炎症細胞浸潤は軽度となり新生血管の増生が認められた。更に28日後では炎症細胞浸潤は殆ど消失し腹膜の癒着等の所見は認められなかった。次にHAp細粒の安全性を確認するためにHAp細粒200mg,生理的食塩水0.5mlをドンリュウラットの腹腔内に投与し経日的に腹部大動脈から採血し、ヘモグロビン濃度,赤血球数,白血球数,血小板数等の変動について調べたが、control群に比べ有意の差は認めなかった。またその他、Alb.,TB.,BUN.,Cre.,Na.,K.,Cl.,Ca.等の血液生化学的検査においても同様にcontrol群に比べ有意の差は認めなかった。 徐放性Carboplatinの基礎的検討を行うにあたり、腹腔内投与を目的として作製したHAp-Carboplatin(HAp-CBDCA)には1バイアル中にHAp細粒:200mg,CBDCA:4mg,マニトール:20mgを含有するようにした。雄ドンリュウラットを用いてこのHAp-CBDCAの1バイアルを腹腔内投与し、投与後15,30分,1,3,6,24時間,3日に採血し、原子吸光光度計を用いプラチナ濃度を測定しfree-CBDCAと比較検討した。 その結果、15,30分ではfree-CBDCA群が高値であったが、2日後には殆ど測定不能となったが、HAp-CBDCA群では有意に高値が3日後まで持続し、HAp-CBDCAの投与により腹腔内にCBDCAがより長時間に亘り留まるものと考えられた。実際このHAp-CBDCAを腹腔内に投与して治療効果が得られるかを確認するため、AH-130腹水肝癌細胞を用い癌性腹膜炎モデルを作成し7日後に、(1)Control(生理食塩水投与)群,(2)HAp細粒投与群,(3)free-CBDCA投与群,(4)HAp-CBDCA投与群の4治療群でその生存期間を比較検討した結果、HAp-CBDCA投与群に有意に生存率の延長が認められ、HAp-CBDCAの投与により治療効果が認められた。
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