研究概要 |
[研究目的] 食道癌の発生頻度が女性に比べ男性に高く、男性例の切除術術後の予後が女性に比べ不良であるという性差の要因の一つとして扁平上皮の存在するアンドロゲン受容体に着目し、発癌実験系におけるアンドロゲン受容体蛋白阻害剤を用いた治療実験を行った。 [研究実績] 平成3年度はおもにラット発癌実験ならびに発癌実験系における治療実験を行った。 1.AMN10週投与後10週経過時の発癌率 AMN10週投与後10週経過時の発癌率は,非去勢ラットで82.7%(n=29),去勢ラットで62.5%(n=32)と去勢による低下傾向がみられなかった. 2.AMN10週投与後Flutamide10週投与時の発癌率 AMN10週投与後Flutamide10週投与時の発癌率は,非去勢ラットで60.6%(n=32),去勢ラットで47.0%(n=34)と去勢による低下傾向がみられず、AMN10週投与後10週経過時の非去勢ラットの発癌率82.7%(n=29)に比べAMN10週投与後Flutamide10週投与時の発癌率が去勢ラットにおいて有意に低下した(p<0.05). 以上よりAMNラット実験食道癌において抗アンドロゲン剤の一つであるFlutamideの発癌抑制効果が認められたことから,食道癌に対する治療効果がFlutamideに認められる可能性が示唆された. [今後の研究に関する展開]ヒト食道癌組織ならびに食道癌細胞培養系を材料としたMonoclonal rat anti-human androgen receptor antibody (AN1-15)を用いた免疫組織化学的研究によるアンドロゲン受容体の同定を行うことを計画中である.
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