現在、心臓移植の臨床において移植心の急性拒絶反応の診断は、心筋バイオプシーによる病理組織学的診断法が最も信頼されるものであるが、心筋バイオプシーは侵襲的で、経済的にも負担になる。心筋受容体はリンパ球受容体と連動することから、末梢血を採血することで容易に急性拒絶の評価ができる可能性があることから、我々はまず最初に、急性拒絶に伴う心筋受容体(αおよびβ受容体)の変化に注目し実験を行った。 平成3年度に行った実験結果では、急性拒絶の末期に急激に心筋受容体数が減少することを明らかにしたが、急性拒絶の早期の病理組織像と受容体の減少との間には良い相関はないようであった(次頁論文)。さらに、実験モデルが従来から広く用いられているOno-Lindsey法(腹部異所性心移植)であったために、つまり、移植心は冠血流をレシピエントの腹部大動脈瘤から受けるのみで、左室はnon-workingで拍動するものであったために、心仕事量の大きさ自体の心筋受容体への影響を考慮することができなかった。心筋受容体は心仕事量の大小により大いに影響される可能性があることから、平成4年度には腹部に左室workingモデルを独自に開発した。(次頁論文)。現在はこの左室workingモデルにより、移植心の急性拒絶に伴う心筋受容体の変化を測定し、より臨床に近い実験モデルにおける拒絶反応モニタリング法を確立し、さらに、当初の目的であるリンパ球受容体測定のみで、急性拒絶の早期診断法の確立を急いでいる。
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