心臓移植の成績は、種々の免疫抑制剤の開発、移植後の患者管理の改善により最近良好となってきている。しかし、移植後遠隔期に発生する冠動脈硬化症は遠隔死の大きな原因であるが、それの原因、また防御法は明らかでない。移植後使用するCyclospolin(Cs)がその発生に関与しているかもしれないという報告はあるが明らかではない。 今回の実験の目的は、心移植後の冠動脈硬化の成因を明らかにし、その予防法を見いだすことである。平成3年度は、冠動脈硬化発生へのCsの影響を見る目的で、ラットの異所性心臓移植モデルを用いて、免疫抑制剤としてCs、FKー506(FK)、15ーDeoxyspergualin(DOS)を用い、移植後の冠動脈硬化の程度について検討した。 その結果、DOS群の冠動脈硬化の程度がCs群より有意に低値であった。血性脂質の検討では、Cs群の中性脂質はFK群とDOS群より有意に高く、Cs群及びFK群のLDLはDOS群より有意に高値であった。 DOS群で冠動脈硬化の程度が軽度であった理由は、DOSのマクロファジ-活性、そして液性抗体産生抑制効果が大きく関与したと考えられ、冠動脈効果発生へのそれらの大きな役割が考えられた。また、CsやFKは血清脂質を増加させ冠動脈硬化を促進する可能性があると思われた。 本年度は上述の結果をもとに、冠動脈硬化の程度の早期診断と有効な予防法の開発を目的として実験を施行する予定である。
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