研究概要 |
異所性心移植モデルとしてOno-Lindsey法が従来用いられてきた。しかし、このモデルでは左心室はnon-workingな状態におかれ、同所性心移植とは異なる左室の反応性が考えられた。これに鑑み、左室がworking状態におかれる異所性心移植モデルを考案し、早期及び遠隔期の拒絶反応について検討を行った。 実験はラットを用い、ドナーとしてはFischerラット(8〜10週、雄)、レシピエントとしてはLewisラット(8〜10週、雄)を使用した。workingモデルの作成法は昨年度の実績報告書で報告した。実験は下記の6群に分類して施行した。 グループ1:workingモデル[サイクロスポリン(Cs):未投与(-), プロスタグランディンI_2(PGI_2):未投与(-)] グループ2:non-workingモデル[Cs(-),PGI_2(-)] グループ3:workingモデル[Cs:投与(+),PGI_2(-)] グループ4:non-workingモデル[Cs(+),PGI_2(-)] グループ5:workingモデル[Cs(+),PGI_2:投与(+)] グループ6:non-workingモデル[Cs(+),PGI_2(+)] 尚、グループ1と2は移植後約20日で屠殺し、グループ3〜6は移植後約60日で屠殺した。 結果:1、早期の拒絶反応の程度はworkingモデル群(グループ1)が高度であった。 2、移植心の冠動脈狭窄に関してグループ5とグループ6で比較した時、グループ5の狭窄の程度がグループ6のそれより有意に軽度であった。グループ3とグループ4の比較では、グループ3の冠動脈狭窄の程度がグループ4のそれより軽度の傾向があった。 3、移植心の左室壁の厚さではworkingモデルがnon-workingモデルより有意に厚かった。 以上の様に、workingモデルの早期及び遠隔期の拒絶反応はnon-workingモデルと異なる所見を呈することが明らかとなった。
|