研究概要 |
直径4mm、長さ40cmの液化亜酸化窒素用の経頸静脈用凍結プロ-ブを米国フリジトロニクス社にて特注品として作製した。このプロ-ブを雑種成犬の右頸静脈より透視下で右心房内へ挿入した。プロ-グ先端には単極電極が付いており、透視とプロ-ブ先端の心電図をガイドに房室結節の周囲各所に凍結(ー60℃,3分間ずつ)を行ない、房室結節の不応期を順行伝導を保ちつつ可能な限り延長させた。凍結プロ-ブの挿入に先立ち、全身麻酔下に左右大腿静脈より右心房及び右心室内へ各々ペ-シング用とセンシング用カテ-テル双極電極を、総頸動脈からはヒス束心電図記録用カテ-テルを挿入することを行ない、術前の電気生理学的測定(AーH伝導時間、Wenckebach点の測定、有効不応期の測定、VーA伝導時間の測定、房室結節リエントリ-エコ-の誘発など)を行なった。術後30分の時点でも同様の電気生理学的測定を行ない、その後に電極カテ-テルを抜去し、慢性犬とした。上記のようにして作成した慢性犬10頭を2ケ月間経過観察した後、術後2ケ月時の電気生理学的評価を行ない、術前値および術直後の値と比較検討した。結果は、AーH時間は術前の68.0±2.4msec(mean±SEM,n=10)から術直後に110.6±14.5(p<0.01),術2カ月後103.5±9.5(p<0.005)へと有意に延長し、Wenckebach点も術前の194.0±11msecから術直後264.4±17.5,術2カ月後266±14.5(p<0.005)へと有意に上昇した。有効不応期も同様の傾向を示した。また術前8頭に房室結節回帰を反映する心房または心室エコ-が誘発されたが、術後にエコ-は8頭のうち4頭で誘発不能となり,他の残り4頭でもエコ-ゾ-ンは縮小した。房室結節を介する室房伝導を術前5頭に認めたが術後には全例で消失した。これらの結果は以前に報告した開胸的凍結法の結果とほぼ同様であり、経頸静脈的房室結節周囲凍結法は房室結節回帰性頻拍に対して有効な治療法となり得ることが示唆された。
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