研究概要 |
ハロセン麻酔下でT7/8硬膜外クリップ法(クリップ圧140g、クリップ時間3秒)によるラット脊髄損傷モデルを作製し、運動機能、脊髄血流量、病理所見、MRI所見について検討を行った。 運動機能は、傾斜面で転倒せずに自分の体を支えていられる角度を経時的に評価したところ、損傷前73.8±2.2^°であったものが損傷後1週間では36.2±9.6^°と最も低かったがその後徐々に回復し、損傷後3週間で55^°(回復率50%)となりその後6週間までの評価はほぼ同値で推移した。 脊髄血流の測定は、14Cーindoーantipyrineによるオ-トラジオラフィ-を用いている。 T7,8椎弓切除のみの正常灰白質の血流は96.0±3.3ml/100g/minであり、白質は22.9±4.1ml/100g/minであったが、損傷後2時間の時点では損傷部より5mm離れた部位で正常の63%に低下しており、損傷部に近づくにつれて減少し、損傷部では正常の19%にまでは低下していた。ステロイド大量療法では60mg/kg投与群に比べて30mg/kg投与群の方がやや血流の増加を認めているが有意の差は得られなかった。 病理学的には急性期では灰白質を中心に出血、壊死巣が広汎に認められ、白質では浮腫像を認めた。損傷後6週間の慢性期では損傷部は広汎な壊死巣を呈しており、その頭・尾側においては損傷部に近づくにつれて白質の空飽化が目立ち、また灰白質では神経細胞の脱落が著明となっていた。 MRIについては1.5T超伝導MRIシステムを使用している。脊髄損傷部位はT1強調画像で低信号,T2強調画像で高信号であり,空洞形もしくは脊髄軟化巣と思われる像を認め、病理所見を裏付ける所見を得ることができた。
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