硬膜外クリップ圧迫法により、T7/8レベルに作製したラット脊髄損傷モデルを使用し、脊髄血流の変化の頭尾側方向での分布、病理組織変化、およびステロイド静脈内大量投与に対する反応を検討した。平成4年度までの検討からは、次のような結果が得られた。 1)損傷後2時間において低下していた損傷部脊髄血流は、損傷後6時間において、さらに低下する傾向がみられた。2)損傷部より5mmはなれた部位にも後索路を中心とする出血・壊死がみられた。3)ステロイドの大量投与では、損傷部での血流の増加はみられなかった。 本年度は、特に、ステロイド投与が脊髄血流に及ぼす影響の空間的分布に関して検討をおこなった。損傷後30分に、生理的食塩水(コントロール)または、methylprednisolone(MP)30mg/kgを静注し(各グループn=4)、6時間後での灰白質・白質の血流を、損傷部および頭尾側方向へ1mmずつ、5mm遠位まで、autoradiography法により測定した。コントロール群では、灰白質の血流は、損傷中心部において最も低下しており、頭側・尾側へ向かうとともに増加傾向がみられた。しかし、5mm遠位部においても、なお、正常値にくらべて低下していた。白質の血流も同様の結果が得られた。MP治療群では、損傷部の血流は、コントロールと同様であったが、尾側2-5mmにおいて、コントロールに比較し、血流の低下は有意に軽度であった。以上より、ステロイド投与は、脊髄損傷レベルに近接した脊髄の循環を保つ効果があることが示唆された。これらの結果は、Journal of Neurosurgeryに投稿中である。
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